接ぎ木とは
接ぎ木
最終更新 2020年11月13日 (金) 11:51
接ぎ木(つぎき)とは、2個以上の植物体を、人為的に作った切断面で接着して、1つの個体とすることである。このとき、上部にする植物体を穂木、下部にする植物体を台木という。通常、遺伝的に異なる部分から構成されている個体を作る技術として用いられるが、果樹等の育種年限の短縮化、接ぎ木雑種の育成などの目的で行われる場合もある。
概説[編集]
接ぎ木は、挿し木や取り木と同じく有用植物を枝単位で栄養生殖させる方法である。他の方法と根本的に異なるのは、目的とする植物の枝から根を出させるのではなく、別の植物の根の上に目的の植物の枝をつなぐことである。接ぎ穂と台木は近縁な方が定着しやすいが、実際には同種ではない組合せもよく使われる。うまくいけばつないだ部分で互いの組織が癒合し、一見は一つの植物のような姿で成長する。勿論実際にはこの接触させた位置より上は目的の植物の枝から生長したものであり、それより下は台木の植物のものであり、遺伝的に異なっている。ただし、まれにこれらが混じり合ってキメラや、更に遺伝子のやりとりが行われることもある(後述)。接ぎ木が成立する仕組みとして、細胞壁を溶かす酵素セルラーゼが働くと接ぎ木がしやすくなることが確認されている[1][2]。
接ぎ木の目的は接ぎ穂とする植物の増殖であることが多い。挿し木とは異なってはじめから根があることが有利な点となる。欠点は、台木となる成長した植物を準備する必要があるために、挿し木ほど効率がよい繁殖が出来ない。
接ぎ木の目的としては、このほかに接ぎ穂にする植物の根を台木の植物に置き換えることそのものである例もある。改良された農業品種は性質が弱い場合がままあり、例えば根の病害虫に対して弱い場合もある。このようなとき、より強健な野生種の根を台木にしてその品種を接ぎ木するのが有効であることがある。更に特殊な例では、葉緑体を持たなくなった品種を野生種の上に接いで育てる、というサボテンの例もある。コニファーでは、根張りの悪い品種の欠点を補うために接ぎ木での繁殖が行われることがある。
よくある失敗としては、台木の方から新芽が出た場合、こちらが元気になっていつの間にか接ぎ穂の方がなくなってしまう、というのがある。たとえばライラックを植えていたのに花が咲くと何故かイボタノキだった、というのがこれにあたる。
国際花と緑の博覧会で展示されたトマピーナも接ぎ木により作られた。
野菜への接ぎ木栽培は、1927年に兵庫県明石郡林崎村(現・明石市林崎町)の農家、竹中長蔵がスイカのつる割病対策として開発したものが世界初である[3]。その後、ナス、トマト、ピーマン、キュウリ、メロン等、様々な野菜の接ぎ木栽培技術が開発された。1987年のモントリオール議定書採択により、土壌消毒剤の臭化メチルが使用禁止となり、これに代わる接ぎ木栽培が求められた[3]。1990年に板木利隆が「全農式幼苗接ぎ木苗生産システム」を開発し[3]、これは現在、世界でもっとも普及しているセル成型苗利用の接ぎ木法である。
目的と実例[編集]
新品種の増殖、保存および収穫までの期間の短縮[編集]
- 果樹一般
- 穂木:新品種
- 果樹の枝変わりや新品種は遺伝的に固定していないので、増殖には接ぎ木を利用する。
病害虫被害の回避[編集]
経済的価値(品質・収穫数)の向上[編集]
植物体の矮化[編集]
- リンゴ
- ナシ
- カンキツ
- モモ
- カキ
- 台木:豊楽台・静カ台など、穂木:カキ
- 樹木の高さを低くして(矮化)、収穫などの作業を行いやすくする。
- 矮性台木品種は最近開発されたばかりのため、まだ普及していない。
接ぎ木手法の種類[編集]
- 枝接ぎ(切接ぎ・腹接ぎ・割接ぎ)
- 芽を持った枝を穂木にして接ぐ。穂木と接触する台木の面の切り方で3方法に分けられる。切接ぎは、台木上端から側面を切り下げてできた形成層断面の間に穂木を挿入する接ぎ方。腹接ぎは、台木途中から側面を切り下げてできた形成層断面の間に穂木を挿入する接ぎ方で、やり直し可能。割接ぎは、台木上端から中央を切り下げてできた形成層断面の間に穂木を挿入する接ぎ方。
- 芽接ぎ
- 台木の樹皮を剥ぎ、そこに芽を接ぐ。成功・失敗が早く判定でき、やり直しも可能。
- 根接ぎ
- 台木の根を穂木に接ぐ。樹勢回復のため用いられることもある。
- 呼び接ぎ
- 穂木を元の植物から切り離さない状態で接ぐ方法。台木と穂木を削ぎ、両者の形成層を密着させ、活着を確認した後で、穂木下部を切り除く。
- 高接ぎ
- 穂木の状態とは関係なく、台木に接ぐ位置で分けた呼び方。植物の高い位置で接ぐ方法。枝接ぎ・芽接ぎなどで行われる。
- 刺し接ぎ
- サボテン科で用いられる高接ぎの一種で、木の葉サボテンを台木にする場合台木先端を尖らせて、玉サボテンなどの穂木に刺して接ぐ方法がある。
備考[編集]
- 花成ホルモン(フロリゲン)の生成についての研究で、接ぎ木を用いた実験が広く知られている。
- 接ぎ木による周縁キメラの作成[5]。2種類のトマト属(Lycopersicon、現在はナス属Solanumに分類される)植物を材料に使って接ぎ木した後、接ぎ木の接合面を横切る形で切断した。その切断面から生じた新芽は周縁キメラであることが確認された。
- 有毒植物を台木とし食用植物を穂木とする接ぎ木は、チョウセンアサガオ、ナスにおいて食中毒例の報告がある。有毒成分の移動に関しては研究結果を待つ必要があるが、避けるべきであると考えられる。
接木雑種[編集]
詳細は「接木キメラ」を参照接木雑種(つぎきざっしゅ)とは、異なる品種の作物を接ぎ木した結果、変異などにより、生じた新種。栄養雑種(えいようざっしゅ) ともいう。
古代ギリシア人は接ぎ木によって果実の香りや色を改良するよう試みた[6]。ソ連のルイセンコは接木のみで雑種ができると主張し、遺伝的な性質までも変化させるという学説を流布した。スターリン、ソ連政府のお墨付きによって絶対的な学説とされたが、科学的な実証性のない学説であったため、その後、接木によって新しい品種はできないとされた。
ルイセンコ理論が否定された後も、接ぎ木によって、新しい品種をつくろうとする農業生産者の取り組みは独自にすすめられた。最近では、佐賀県武雄市の生産者が温州ミカンの木にレモンの苗木を接ぎ木することで、味が甘く形が丸いレモンをつくることに成功している[7]。現代の正確なDNA分析によって確認されている[8]接木雑種としてトウガラシとピーマンの接ぎ木で生まれた「ピートン」がある[6]。「サイエンス」の2009年5月1日号には、ドイツのマックス・プランク研究所の研究者が接ぎ木で細胞間の遺伝物質の交換が生じることを示唆する論文が発表された[9][10]。
脚注[編集]
- ^ Michitaka Notaguchi et al. (2020-08-07). “Cell-cell adhesion in plant grafting is facilitated by β-1,4-glucanases”. Science369 (6504): 698-702. doi:10.1126/science.abc3710.
- ^ 木村俊介 (2020年8月13日). “「接ぎ木」の可能性は無限大? 仕組みの一端が明らかに”. 朝日新聞
- ^ a b c “戦後日本のイノベーション100選 高度経済成長期 接ぎ木(野菜)”. koueki.jiii.or.jp. 公益社団法人発明協会. 2020年4月15日閲覧。
- ^ “ナス 「どうやってつくるの?」”. 農林水産省. 2012年2月2日閲覧。
- ^ Winkler, H. (1935). “Chimären und Burdonen-Die Lösung des Pfropfbastardproblems”. Der Biologe9: 279-290.
- ^ a b 新聞「農民」 (2003年5月19日). “ギリシア時代のロマン—接木でとがってない唐辛子「ピートン1世」誕生、柳下 登(東京農工大学名誉教授・理学博士)”. 「農民」記事データベース. 2009年12月2日閲覧。
- ^ 西日本新聞 (2009年2月18日). “丸くて甘いレモン登場”. 2009年12月2日閲覧。
- ^ シクロケム. “サイエンストーク 科学の現場 第1回 農学とシクロデキストリンの接点”. 2009年12月2日閲覧。
- ^ Stegemann, S.; Bock, R. (2009). “Exchange of genetic material between cells in plant tissue grafts”. Science324: 649-651. doi:10.1126/science.1170397. PMID19407205.
- ^ 北海道教育大学 函館校 生物学教室. “「接ぎ木雑種」再見!!”. 2009年12月2日閲覧。
関連項目[編集]
- 挿し木
- 坂上頼泰 接ぎ木の技法を発明した。豊臣秀吉より木接太夫の称号を与えられる。
- 内村鑑三 自らの宗教観を、武士道の上に接ぎ木されたるキリスト教とした。
- 大津祐男 みかん農家。接ぎ木名人と呼ばれた。
- 苗木
接ぎ木クリップ
【 1,000個入/内径1.4mm/対応内径1.4~1.7mm 】 1.4mm 1.5mm 1.6mm 1.7mm
【 1,000個入/内径1.8mm/対応内径1.8~2.1mm 】 1.8mm 1.9mm 2.0mm 2.1mm
【 1,000個入/内径2.2mm/対応内径2.2~2.5mm 】2.2mm 2.3mm 2.4mm 2.5mm
ナス科 苗 幼苗 接木の接ぎ木にご利用ください。
ナスやトマトやピーマンなどの接ぎ木におすすめです。✅農家の意見を聞いて開発した安価な接ぎ木具(接木具)「接木用クリップホルダー」 で全農式接ぎ木・全農式幼苗接ぎ木苗生産システムの接ぎ木に最適な接ぎ木チューブです。
✅茎の口径が少し太い場合には、 クリップのようにつまむと挿入口を少し広げる事も出来て茎を傷つけにくい仕様。
✅ホルダーの上下から茎を簡単に挿入出来ます。
✅チューブが軽いので、苗の負担が軽減。
✅本体のEVA樹脂は柔軟性と弾力性のある素材なので、茎を傷つけにくく つまんだ部分を離すと挿入口が元の形にしっかり戻ります。
EVA樹脂は塩素を含まず環境に優しいエコ素材であり 紫外線にも強く劣化しにくい素材です。✅3サイズ展開
・チューブ内径 1.4mm / 対応内径 1.4〜1.7mm( 1.4mm / 1.5mm / 1.6mm / 1.7mm )
・チューブ内径 1.8mm / 対応内径 1.8〜2.1mm ( 1.8mm / 1.9mm / 2.0mm / 2.1mm )
・チューブ内径 2.2mm / 対応内径 2.2〜2.5mm( 2.2mm / 2.3mm / 2.4mm / 2.5mm )
【全農式幼苗接ぎ木苗生産システム】
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用 最終更新 2020年5月26日 (火) 01:52
1990年に板木利隆によって開発された、セル成型苗を台木・穂木ともに斜め切りして支持具で固定する接ぎ木法である。台木をセルトレイ上に植えたままの状態で楽に簡単に接ぐことができるため、広く使われるようになり、セル成型苗を利用した接ぎ木法としては現在、世界でもっとも普及している。
【内容】
台木・穂木ともにセルトレイで育てた幼苗を用い、子葉上の第1節間を斜め30度に切断する。その後、接合部をチューブ状の支持具で圧着固定する。これを活着促進装置(ナエピット)に入れ、最適温度28℃(昼夜間)、湿度93%、照明時間12時間で、3から4日ほど遮光状態で養生する。
【効果】
切断面は斜め30度で、接合面を大きく、圧着しやすくすることにより活着率を高めた。活着促進装置により、最適条件に保たれることにより、接ぎ木歩留まりは100%近くまで向上した。また、支持具には縦に割れ目が入っており、苗が生長すると自然に脱落するようになっている。従来は接ぎ木を1日あたり400から500本しかできなかったが、1000から1200本まで可能になった。
広く普及し、国内だけでなく世界各国で代表的なナス科野菜の接ぎ木方法として採用されている。
接ぎ木の方法と接ぎ木クリップの使い方
https://rirai.net/jetb/wp-admin/post.php?post=899&action=edit
これを知れば簡単!家庭菜園の種と苗の選び方
https://rirai.net/jetb/wp-admin/post.php?post=916&action=edit
接ぎ木苗を作ってみよう!接ぎ木の方法と接ぎ木クリップの使い方
https://rirai.net/jetb/wp-admin/post.php?post=899&action=edit
株式会社RIRAI
株式会社RIRAIは、園芸資材のオリジナル資材の企画から販売までを行うメーカーです。
「接ぎ木クリップ」は、ホルダーの上下から茎を簡単に挿入出来て、茎を傷つけにくい仕様であり格安・安価です。
材質は柔軟性と弾力性のあるEVA樹脂なので、つまんだ部分を離すと挿入口が元の形にしっかり戻ります。
トマトなど果実の誘引に「誘引クリップ結」なら、軽い力で扱う事が出来て手が疲れにくいので女性や年配者の方にもおすすめで、軽い力で扱えるのにズレ落ちにくい仕様です。紫外線劣化に強いプラ材質とステンレス製のバネを使用した商品で長持ちします。
屋号 | 株式会社RIRAI |
---|---|
住所 |
〒370-0603 群馬県邑楽郡邑楽町中野2839-34 |
電話番号 |
090-3537-9300 < ご連絡時のお願い > 勧誘などの迷惑電話が多い為、知らない番号の電話には 出ないようにしております。メール(mail: info@rirai.net) 連絡の方が助かりますが、お急ぎの際は電話の伝言に メーッセージを残してください。 確認次第、折り返しお電話させて頂きます。 |
営業時間 |
8:30~18:00 定休日:土日祝日・年末年始 |
代表者名 | 小倉丈治 |
info@rirai.net |